【誕生の経緯】「パワー!」は2000年の芸歴1年目に生まれた
「パワー!」の誕生には、先輩芸人の前でうまく笑いを取れなかったという意外なエピソードがある。
TOKYO FMの番組「SUBARU Wonderful Journey ~土曜日のエウレカ~」が2022年2月19日に放送した、なかやまきんに君の出演回では、本人の芸人デビュー当時の話が紹介された。
誕生の舞台となったのは、関西で放送されていたバラエティ番組『吉本超合金』。FUJIWARAと2丁拳銃がレギュラーを務める番組に、芸歴1年目のきんに君がゲストとして出演した。
ところが、オープニングから先輩芸人たちが次々と笑いを取るなか、きんに君は話を振られてもうまく答えられなかった。そこで、最後に苦し紛れに叫んだのが「パワー!」だったという。
この予想外の一言に先輩たちがツッコミを入れ、現場は大きな笑いに包まれた。本人にとっては窮地を切り抜けるための一言だったが、結果的に長年愛される看板ギャグになった。
つまり、計算された流行語として作られたのではなく、舞台上の偶然と本人のキャラクターが結びついて誕生した言葉だったのだ。
「パワー!」が生まれた背景には筋肉芸があった

きんに君は2000年にNSC大阪校22期生としてピン芸人デビューした。
養成所時代から、筋肉を見せるボディービルのポージングを取り入れた芸を披露していた。TOKYO FMの番組記事によれば、当時から自分の筋肉に向かって「さぁ、来い!」「見せるのか?」と問いかけるスタイルができあがっていた。
さらに、目立つためにタンクトップを着続けたことも、現在のビジュアルにつながっている。
芸人としての個性を覚えてもらうための衣装、鍛え上げた肉体、短い掛け声。この3つが組み合わさり、なかやまきんに君ならではの芸風が形成されていった。
「パワー!」は、その芸風を象徴する締めの言葉として定着したのである。
【「ヤー!」との関係】2つの掛け声がセットで愛される理由

なかやまきんに君の持ちネタを語るとき、「パワー!」と並んで欠かせないのが「ヤー!」だ。
両者はよくセットで使われるが、芸の中で担う役割には違いがある。
- ヤー!: 筋肉を強調する動きやポーズと組み合わせる、勢いのある掛け声。
- パワー!: 最後に力強さを表現し、笑いを締めくくる決めゼリフ。
この組み合わせによって、観客は言葉だけでなく、身体の動きや表情まで含めて楽しめる。
「パワー!」に特別な意味はある?

辞書的な意味で考えれば、パワーは力や能力、エネルギーなどを指す言葉だ。
しかし、きんに君のギャグにおける「パワー!」は、単純に筋肉の強さを表すだけではない。
場の空気を変えたり、気持ちを前向きにしたり、笑いを生み出したりするための表現として機能している。
例えば、何かに成功したときに叫べば喜びの表現になり、友人を応援するときに使えば励ましの言葉になる。
2022年のトレンドアワードでも、若者から「前向きな気持ちになれる」「元気が出る」といった評価が寄せられた。
このように、言葉の意味を細かく説明しなくても、声の勢いとポーズだけで感情が伝わることが大きな特徴だ。
「ヤー!」だけでも成立するのか
「ヤー!」単独でも、きんに君らしい筋肉芸の一部として認識されている。
ただし、2022年に若者の間で大きく広がったのは「ヤー!」だけではなく、「ヤー!パワー!」という一連のフレーズだった。
両方を組み合わせることで、登場から決めポーズまでの流れが完成する。
なお、「パワー!」が『吉本超合金』で生まれた経緯は番組出演時のエピソードとして紹介されているが、「ヤー!」単独の発生場面まで同じように説明されているわけではない。2つの言葉を無理に別々の誕生日に結びつける必要はない。
【筋肉ルーレットとの関係】「どっちなんだい?」は別の看板ネタ
なかやまきんに君の代表的なギャグには、「筋肉ルーレット」もある。
「筋肉ルーレット」は、きんに君が自分の筋肉に質問を投げかけ、筋肉の動きによって答えを示すという独特の芸だ。
代表的な流れは次のとおり。
1. 筋肉に質問する。
2. 「どっちなんだい?」と問いかける。
3. 大胸筋を左右交互に動かす。
4. 筋肉の動きで答えを示す。
5. 「パワー!」で締めくくる。
この一連の流れは、筋肉を使った視覚的な面白さと、結果が分かるまでの間の取り方が魅力になっている。
筋肉ルーレットの誕生は楽屋での雑談
筋肉ルーレットの誕生については、2022年のTOKYO FM出演時に、きんに君本人が説明している。
吉本新喜劇に所属していた頃、楽屋で周囲に「筋肉でしゃべれます。どっちの筋肉でしゃべっているか予想してみてください」と話し、大胸筋をピクピク動かして見せたことが始まりだったという。
本人も、当時の楽屋ノリから生まれたネタだと振り返っている。
ここで押さえたいのは、筋肉ルーレットと「パワー!」の誕生経緯は別だという点だ。
「パワー!」は『吉本超合金』で生まれた一言。一方、筋肉ルーレットは吉本新喜劇時代の楽屋で生まれたネタである。どちらも長く愛されているが、同じタイミングで誕生したわけではない。
代表的なネタと関連人物・出来事の関係
| 人物・ネタ・出来事 | 時期 | 関係・特徴 |
|---|---|---|
| なかやまきんに君 | 2000年 | NSC大阪22期生としてデビュー |
| FUJIWARA | 芸歴1年目 | 『吉本超合金』で「パワー!」誕生の場面に関係 |
| 2丁拳銃 | 芸歴1年目 | 『吉本超合金』のレギュラー出演者 |
| 吉本新喜劇 | 2000年代 | お笑いの基礎を学び、筋肉ルーレットが誕生 |
| 筋肉ルーレット | 吉本新喜劇時代 | 楽屋での大胸筋の動きから生まれたネタ |
| 福岡市東警察署の一日署長 | 2021年12月 | 筋肉ルーレットの映像がNHKのニュースをきっかけに話題に |
| Z世代トレンドアワード | 2022年 | 「ヤー!パワー!」が年間トレンド大賞を受賞 |
2021年の一日警察署長で起きた予想外の出来事
筋肉ルーレットの面白さを広く印象づけた出来事の一つが、2021年12月の福岡市東警察署での一日署長だ。
きんに君は母校で取材を受け、市民の安全を守るという真面目なテーマについて質問された。
そこで記者から「福岡市民の安全を守りますか?守らないですか?」と尋ねられると、筋肉ルーレットの形式で回答。
「守るのか、守らないのかい、どっちなんだい」と問いかけ、最後に「ま~も~る!パワー!」と披露した。
この場面はNHK福岡のニュースで紹介された。次の原稿を読む予定だったアナウンサーが思わず笑ってしまい、原稿を読み進められなくなるというハプニングも起きた。
本人は後日、TOKYO FMの番組で当時の出来事を振り返っている。
普段なら笑いが起こるお笑い番組ではなく、厳粛なニュースの現場で起きた出来事だったこともあり、映像の意外性が話題を広げるきっかけになった。
【2022年に再ブレーク】Z世代トレンドアワード受賞と流行の理由
2022年は「ヤー!パワー!」にとって大きな転換点になった。
長年使い続けてきた持ちネタが、若者を中心に再評価され、年間トレンドを代表する言葉として選ばれたからだ。
Z世代トレンドアワード2022で年間大賞を受賞
2022年11月30日、都内で開催された「Simeji presents Z世代トレンドアワード2022」で、「ヤー!パワー!」が年間トレンド大賞に選ばれた。
このアワードは、日本語入力・顔文字キーボードアプリ「Simeji」を提供するバイドゥによる企画だ。
ITmediaが紹介した調査結果によると、10~24歳を対象とした調査で、「ヤー!パワー!」は年間トレンド大賞を獲得。コト部門でも1位となった。
選ばれた理由として紹介された若者の声には、次のようなものがある。
- 前向きな気持ちになれて元気が出る。
- 一周回って大流行している。
- 特に用事がなくても口に出したくなる。
- 返事に困ったときにも使いやすい。
- 勢いがあって、言いたくなる魅力がある。
単に芸人のギャグとして面白いだけでなく、日常のコミュニケーションに取り入れやすい言葉として支持されたことが分かる。
ユーキャン新語・流行語大賞ではノミネート止まり
ここは混同されやすいポイントだ。
「ヤー!パワー!」は2022年の「現代用語の基礎知識選 ユーキャン新語・流行語大賞」にもノミネートされた。
しかし、年間大賞やトップ10に選ばれたわけではない。
2022年12月1日に発表された結果では、年間大賞は「村神様」。きんに君の「ヤー!パワー!」はノミネート30語に入ったものの、トップ10入りは逃している。
つまり、正確な受賞歴は次のとおりだ。
- Z世代トレンドアワード2022:年間トレンド大賞を受賞。
- ユーキャン新語・流行語大賞2022:ノミネート30語に選出。
- ユーキャン新語・流行語大賞2022:トップ10・年間大賞には選ばれず。
2つの賞は選考方法や対象となる流行の捉え方が異なる。Z世代向けの調査で高く評価されたことと、社会全体を対象とする流行語大賞でトップ10入りすることは、必ずしも同じではない。
なぜ昔のギャグが若者に受けたのか
「ヤー!パワー!」の再ブレークには、いくつかの理由が考えられる。
1. 短くて覚えやすい
長いセリフや複雑な説明が必要ない。聞いた瞬間に意味や雰囲気が伝わり、誰でもまねしやすい。
2. 言葉と動きがセットになっている
声だけではなく、筋肉を強調するポーズや表情が加わる。短い動画でも印象に残りやすい芸風だ。
3. 場の空気を変えられる
会話が途切れたときや、ちょっとした沈黙が生まれたときにも使える。実際に2022年の授賞式では、共演した本田紗来も、周囲が静かになったときに「パワー!」を使うと話していた。
4. 前向きな印象がある
怒りや攻撃性ではなく、明るさや勢いを感じさせる。聞く側も気軽に受け入れやすい。
5. SNSや動画との相性がよい
短い決めゼリフと分かりやすい動きは、切り抜き動画やスタンプなどにも展開しやすい。2022年の報道では、若い世代の間でスタンプが使われていたことも紹介されている。
こうした特徴が重なり、2000年から続く芸が、2022年に新しい世代のコミュニケーション表現として再発見された。
【ギャグの使い方】日常で「パワー!」を使うならどんな場面?
なかやまきんに君本人が、2022年のORICON NEWSの取材で語った使い方は興味深い。
「基本的に『パワー!』はスベった後に使う」
本人は、自分が滑った後に多用していたら広まったと説明している。
さらに、一般の人に向けても、テンションを上げたいときや、変な間ができたときに大きな声で使うと場が和むと話していた。
日常で使いやすい5つの場面
| 場面 | 使い方 | 期待できる効果 |
|---|---|---|
| 友人を応援するとき | 「頑張れ!パワー!」 | 明るく励ます |
| 仕事や勉強を終えたとき | 「終わった!パワー!」 | 達成感を共有する |
| 会話が途切れたとき | 笑顔で「パワー!」 | 場の空気を和ませる |
| 失敗してしまったとき | 照れ笑いとともに「パワー!」 | 失敗を笑いに変える |
| スポーツやイベント | ポーズを決めて「ヤー!パワー!」 | 周囲を盛り上げる |
もちろん、どんな場所でも大声を出せばよいというものではない。
職場の会議や静かな公共施設など、周囲への配慮が必要な場面では、声の大きさやタイミングを考えたい。
大切なのは、相手を笑わせようと無理に押しつけるのではなく、場の雰囲気を見ながら使うことだ。
「パワー!」が滑ってしまったときは?
ここが、このギャグの面白いところでもある。
普通のギャグは、笑いが起きなければ失敗と受け止められやすい。しかし、きんに君の芸風は、滑った後の間や反応の薄さまで含めて笑いにつながる場合がある。
実際、本人自身が滑った後に使って広まったと説明している。
つまり、「パワー!」の面白さは、言葉そのものだけでなく、発する人の表情、タイミング、周囲との空気感によって完成する。
無理に大げさなリアクションをする必要はない。軽くポーズを決めて使うだけでも、十分に雰囲気を楽しめる。
【2026年現在】なかやまきんに君は「パワー!」だけの芸人ではない
2026年現在、なかやまきんに君は、お笑い芸人としてだけでなく、ボディービルダー、YouTuber、フィットネス関連事業の発信者としても活動している。
1978年9月17日生まれ、福岡県出身。2000年にNSC大阪校22期生としてデビューし、2006年から2011年にかけてアメリカ・ロサンゼルスへの筋肉留学を経験した。
2021年末には吉本興業とのマネジメント契約を終了し、独立。公式プロフィールでは、YouTubeでの情報発信、オンラインフィットネス、プロテインなど筋肉に関連する食品の開発にも取り組んでいる。
2026年も企業CMや健康関連の仕事で活躍
2026年の活動を確認すると、「パワー!」というキャラクターが広告や健康関連の仕事でも生かされている。
| 時期 | 活動 | 内容 |
|---|---|---|
| 2026年1月 | JRA-VAN | 「10完歩君」篇などの新CMに出演 |
| 2026年3月 | 日清オイリオ | 「日清MCTオイルHC」の新CMに出演 |
| 2026年3月 | JRA-VAN | 「みんなきんに君 関西表彰式」篇を展開 |
| 2026年6月 | JRA-VAN | 「みんなきんに君 宝塚表彰式」篇を放映 |
日清オイリオの2026年3月19日付の公式発表では、きんに君が「日清MCTオイルHC」のアンバサダーとして新CMに出演。本人の歌声やコミカルな動きを取り入れた広告が全国で放映された。
また、JRAシステムサービスは2026年6月5日、JRA-VANの特別版CM「みんなきんに君 宝塚表彰式」篇の放映を発表している。
こうした起用からも、筋肉と明るいキャラクターを組み合わせた芸風が、テレビ番組だけでなく企業広告でも活用されていることが分かる。
25年以上続く芸風を本人はどう捉えている?
2025年7月、TBSラジオ『パンサー向井の#ふらっと』に出演したきんに君は、デビュー25年を迎えた芸風について語った。
また、2025年8月のイベントでは、自身のネタについて「25年前から“ヤー”と“パワー”のみ」とユーモアを交えて説明している。
長年同じ掛け声を使い続けることを、再利用や継続にたとえて「お笑いSDGs」と表現したのも印象的だ。
新しいネタを次々に生み出すのではなく、同じ芸を磨き、時代や出演する場所に合わせて見せ方を変える。これが、きんに君の独自の芸風になっている。
【よくある質問】なかやまきんに君のパワーに関するFAQ
Q1:なかやまきんに君の「パワー!」はいつから始まった?
A1:2000年の芸歴1年目から。本人の説明によると、関西の番組『吉本超合金』に出演した際、先輩芸人の前でうまく答えられず、苦し紛れに叫んだことが誕生のきっかけだった。
Q2:「ヤー!パワー!」の元ネタは何?
A2:なかやまきんに君自身の筋肉芸が元になっている。「パワー!」は『吉本超合金』で生まれた掛け声で、「ヤー!」と組み合わせることで現在の決めゼリフとして定着した。
Q3:「パワー!」と「筋肉ルーレット」は同じネタ?
A3:別のネタ。筋肉ルーレットは、本人が大胸筋を左右に動かし、筋肉に質問への答えを示させる芸。吉本新喜劇時代の楽屋ノリから誕生した。
Q4:「パワー!」は2022年の流行語大賞を受賞した?
A4:ユーキャン新語・流行語大賞2022ではノミネート30語に選ばれたが、トップ10入りや年間大賞受賞はしていない。一方、Z世代トレンドアワード2022では年間トレンド大賞を受賞している。
Q5:2026年現在も「パワー!」は使われている?
A5:使われている。2026年も日清オイリオやJRA-VANの広告などに出演し、筋肉を生かしたおなじみのキャラクターで活動している。
Q6:「パワー!」は普段の会話でも使える?
A6:使える。本人も、テンションを上げたいときや会話に変な間ができたときに使う方法を紹介している。友人への応援や、何かを達成したときの掛け声にも向いている。
まとめ:なかやまきんに君の「パワー!」が長く愛される理由
なかやまきんに君の「パワー!」は、2000年の芸歴1年目に誕生した、25年以上続く代表的な持ちネタだ。
その始まりは、先輩芸人の前でうまく答えられず、苦し紛れに叫んだ一言だった。そこから筋肉を使ったポーズや「ヤー!」との組み合わせによって、独自の芸風へと成長していった。
2022年にはZ世代トレンドアワードで年間トレンド大賞を獲得。若い世代が生まれる前から続いていた芸が、SNSや動画を通じて新しい形で広がった。
さらに、2026年現在も企業CMや健康関連の活動など、活躍の場は広がっている。
長く続けてきた芸を、時代に合わせて新しい世代に届ける。 これこそが、なかやまきんに君の「パワー!」が一過性の流行で終わらず、定番の持ちネタとして愛され続けている理由だ。