【過去にも発生】2007年のええじゃないか点検事故との共通点

目次

今回の死亡事故を考えるうえで、見過ごせない事実があります。それは、同じ「ええじゃないか」で、約18年前にも点検中の従業員が車両とレールの間に挟まれる事故が起きていたことです。

【検証資料 1】富士急ハイランド死亡事故の当時の様子・関連報道写真(出典:Yahoo!ニュース)

2007年12月にも従業員が重傷

富士急ハイランド死亡事故

2007年12月、ええじゃないかのブレーキパッド交換作業中、男性従業員が突然動き出した車両の車輪とレールの間に腹部を挟まれました。男性は胸部の骨を折るなどの重傷を負ったと報じられています。

この事故については、作業時に電源を切るなどの手順が守られなかったことが原因として伝えられました。

今回の2025年の事故と比較すると、共通するのは、乗客がいない保守作業の時間帯に、作業員が車両の可動部分に近づいている状況で、車両が予期せず動いたという点です。

18年間で何が変わらなかったのか

富士急ハイランド死亡事故

2007年の事故後にも安全管理上の問題が認識されていたにもかかわらず、2025年に再び類似した事故が発生したことは重い意味を持ちます。

安全管理では、作業員に注意を促すことと、危険な操作そのものをできなくすることは別の対策です。

例えば、作業前に電源を切る、ブザーを鳴らす、無線で連絡するといった手順は、作業者が正しく実行することを前提としています。一方、電源操作部に鍵をかけ、作業員が全員戻るまで操作できない仕組みなら、個人の思い込みや確認漏れによる誤操作を防ぎやすくなります。

今回の事故後に導入されたロックアウトシステムは、まさにこの違いを踏まえた対策です。

2007年の事故と2025年の死亡事故を並べて見ると、設備の点検技術だけでなく、作業中に機械を動かせない状態を組織として保証できるかどうかが、根本的な課題として浮かび上がります。

【再発防止策を徹底検証】ロックアウトシステム導入と安全管理の変更点

富士急ハイランド死亡事故

富士急ハイランドは2025年5月1日の営業再開にあたり、事故原因の究明、再発防止策の策定、従業員への再教育を実施したと公表しました。

富士急行が2025年5月2日に発表した営業再開に関する資料では、所管官庁から対策について確認を受けたことも説明されています。

1. ロックアウトシステムで第三者の操作を防止

今回の再発防止策の中心となったのが、ロックアウトシステムです。

ロックアウトとは、機械や設備を点検・修理している間、電源や操作盤を鍵でロックし、第三者が勝手に操作できないようにする安全管理方法です。

富士急ハイランドでは、点検作業中に車両を動かす電源ボタンにカバーを設け、作業に参加する従業員がそれぞれ鍵をかける仕組みを導入しました。

この仕組みでは、作業員一人ひとりが自分の鍵を管理するため、他の従業員が作業を終えたと判断しても、残っている作業員の鍵がかかっていれば、操作できない状態を維持できます。

つまり、従来のように「周囲に人がいないと思った」「作業は終わったはずだ」という判断だけで車両が動いてしまう危険を、設備面から減らすことが狙いです。

2. 点検作業の手順を見直し、従業員を再教育

設備の変更だけで事故防止が完結するわけではありません。富士急ハイランドは、点検作業の手順を見直し、それに伴う全従業員への再教育を実施したと公表しています。

点検作業では、複数の従業員が異なる位置で作業することがあります。そのため、誰がどこで作業しているか、誰が車両の操作を担当するか、作業終了を誰が判断するかといった情報共有が欠かせません。

特に重要なのは、作業員全員の安全が確認できるまで設備を再起動しないという考え方です。単に作業責任者が終了を宣言するだけではなく、各作業員の鍵の解除によって安全状態を確認する仕組みが求められます。

3. ホイッスル携行と労災防止活動

富士急ハイランドの現在の公式安全対策ページには、従業員の安全管理として、ロックアウト措置に加えて整備士のホイッスル携行が掲載されています。

緊急事態を周囲に迅速に知らせるためのもので、万一の異常発生時に警告を伝える手段を確保する取り組みです。

また、朝礼での労災防止標語の唱和やKY活動も実施されています。KY活動とは、危険予知活動のことで、作業前に潜在的な危険を洗い出し、事故を防ぐための行動を確認する取り組みです。

富士急ハイランドは、2025年10月に労働安全衛生マネジメントシステムの国際規格であるISO45001の認証を取得したことも公表しています。

再発防止策の評価で見るべき3つのポイント

対策 防止するリスク 評価するポイント
ロックアウト 点検中の誤起動 全作業員の鍵が解除されるまで操作できないか
作業手順の見直し 連絡漏れ・確認不足 作業開始から終了まで責任者と担当者が明確か
再教育・KY活動 思い込み・危険予測不足 現場でルールが継続して実行されているか
ホイッスル携行 緊急時の連絡遅れ 異常を周囲へ迅速に伝えられるか
ISO45001 労働安全衛生管理の不徹底 組織的な管理と継続的改善が機能しているか

特に重要なのは、ロックアウトのような設備面の対策と、従業員教育のような運用面の対策を組み合わせることです。

人間は、どれだけ経験を積んでも確認漏れや思い込みを完全にはなくせません。だからこそ、安全管理では個人の注意力だけに依存せず、誤操作が重大事故につながらない仕組みを整える必要があります。

【富士急ハイランド2026年最新情報】ええじゃないかは現在運行している?

2026年10月30日・公式運行情報で運行中

2026年10月30日付の富士急ハイランド公式運行情報では、「ええじゃないか」は運行中を示す「◎」と表示されています。

公式運行情報の掲載内容。運行状況は天候・点検などによって変更される場合があります。



ええじゃないか
運行中



営業時間
9:00〜19:00


最高速度
126km/h


身長制限
125〜200cm


年齢制限
54歳以下


出典:富士急ハイランド公式運行情報・ええじゃないか利用基準。

営業再開後の安全対策はどうなっている?

2025年5月1日の営業再開以降、富士急ハイランドは、従業員と来園者の両方を対象にした安全管理の取り組みを公式サイトで公開しています。

ただし、従業員向けの労働安全対策と、乗客向けの安全対策は分けて理解する必要があります。

従業員向けの安全対策

- 操作盤などを鍵で固定するロックアウト措置
- 整備士によるホイッスルの携行
- 労災防止標語の唱和
- KY活動の実施
- ISO45001に基づく労働安全衛生管理

来園者向けの安全対策

- アトラクションごとの身長・年齢制限
- 乗車前の安全プレショー
- シートベルトのロックをスタッフと利用者双方で確認
- 安全総点検と試運転
- 利用者アンケートによる改善

公式サイトによると、安全総点検では、ハード面と運用面の点検後に100回の試運転を実施し、スタッフ120人の試乗会や利用者100人のアンケートによる確認も行っています。

これらは施設全体の安全管理として公表されている内容です。すべてが「ええじゃないか」単独の事故後検証として実施されたものではない点には注意が必要です。

ISO45001取得は安全性の証明になるのか

ISO45001は、労働安全衛生マネジメントシステムに関する国際規格です。職場に潜む危険を特定し、リスクを低減し、継続的に改善するための管理体制を対象としています。

富士急ハイランドが2025年10月に取得したことは、労働安全衛生の管理体制を強化するうえで一つの節目となります。

一方で、認証を取得したからといって、将来の事故が絶対に起きないことを保証するものではありません。認証の有無だけではなく、現場の点検作業でロックアウトが守られているか、作業員の安全確認が実行されているか、ヒヤリ・ハット情報が改善に反映されているかが重要です。

2026年現在、読者が注目すべきなのは、対策を導入したという発表だけでなく、その対策が日常の現場で継続して機能しているかという点です。

【よくある質問】富士急ハイランドの死亡事故に関するFAQ

Q1:富士急ハイランドの死亡事故はいつ発生しましたか?

A1:2025年2月28日午前11時45分ごろです。富士急ハイランドのジェットコースター「ええじゃないか」の定期点検中に、当時29歳の従業員・嘉村伊織さんが動き出した車両とレールの間に挟まれ、死亡しました。

Q2:事故の原因は何だったのでしょうか?

A2:点検作業中、嘉村さんが車両の下にいた状況で、別の従業員が車両を動かしたことが事故につながったとされています。安全確認やブザーによる周知が十分に機能しなかったことが捜査の焦点となりました。

Q3:現場責任者はどうなりましたか?

A3:当時の40代の現場責任者は2026年3月2日に業務上過失致死の疑いで書類送検され、同年5月8日には罰金50万円の略式命令が出たと報じられています。

Q4:ええじゃないかはいつ営業再開しましたか?

A4:2025年5月1日に営業を再開しました。ロックアウトシステムの導入、作業手順の見直し、従業員への再教育などが再開に向けて実施されました。

Q5:2007年にも同じような事故があったのですか?

A5:はい。2007年12月にも、ええじゃないかの部品交換中に男性従業員が動き出した車両とレールの間に挟まれ、重傷を負う事故が発生していました。

Q6:2026年現在、ええじゃないかは運行していますか?

A6:2026年10月30日付の富士急ハイランド公式運行情報では運行中と表示されています。ただし、実際の運行状況は当日の点検や天候などによって変わる場合があります。

まとめ:富士急ハイランド死亡事故から考える安全管理の本質

富士急ハイランドの「ええじゃないか」で発生した死亡事故は、2025年2月28日の定期点検中に、従業員の嘉村伊織さんが車両とレールの間に挟まれて亡くなった労働災害です。

事故後の捜査では、車両を動かす際の安全確認やブザーによる周知が十分だったのかが問題となりました。2026年3月には当時の現場責任者が書類送検され、5月には罰金50万円の略式命令が出たと報じられています。

施設側は2025年5月の営業再開に向けて、ロックアウトシステムの導入、作業手順の見直し、従業員教育などを実施しました。2026年10月現在、公式運行情報では「ええじゃないか」は運行中です。

【プロの結論】事故を繰り返さないために必要なこと

今回の事故から読み取れる最大の教訓は、機械設備の安全を人間の注意力だけに委ねてはいけないということです。

安全確認の声かけやブザーは必要ですが、それだけでは誤操作を完全には防げません。点検中に誰かが危険区域に残っているなら、他の人が誤って操作しようとしても機械が動かない仕組みが必要です。

ロックアウトシステムは、その考え方を具体化した対策です。しかし、導入そのものがゴールではありません。鍵の管理、作業者間の連絡、点検終了の確認、管理者による監督、定期的な訓練まで含めて初めて、実効性のある安全管理になります。

また、2007年にも類似する点検事故が起きていた事実は、事故から得た教訓を組織の仕組みに定着させることの難しさを示しています。

嘉村伊織さんの命が失われた事故を、単に一人の従業員の操作ミスとして終わらせてはなりません。遊園地の安全は、来園者が乗る時間だけでなく、従業員が設備を整備する時間にも守られていなければならないからです。

2026年以降も注目すべきなのは、営業が再開されたという事実だけではありません。再発防止策が現場で守られ続け、従業員と来園者の双方の安全が実際に確保されているかどうかです。

それこそが、この事故から富士急ハイランドと遊園地業界全体が引き継ぐべき最も重要な課題です。

主な情報源:富士急行・富士急ハイランド公式発表、富士急ハイランド公式安全対策資料、テレビ朝日、テレビ山梨(TBS NEWS DIG)、共同通信配信記事、山梨県知事記者会見。