【グラミー賞2022】BTSが披露した「Butter」のステージを詳しく解説
第64回グラミー賞は、2022年4月3日にラスベガスのMGMグランド・ガーデン・アリーナで開催された授賞式だ。司会はトレバー・ノアが務め、BTSのほか、ビリー・アイリッシュ、オリヴィア・ロドリゴ、リル・ナズ・Xらが出演した。
BTSが披露したのは、2021年5月にリリースされた英語シングル「Butter」。同曲はBillboard Hot 100で通算10週にわたって1位を獲得した世界的ヒット曲であり、グラミー賞の最優秀ポップ・デュオ/グループ・パフォーマンス賞にもノミネートされていた。
今回のステージが特別だった理由は、単にヒット曲を歌うだけではなく、楽曲の世界観を大胆に再構築した点にある。黒いスーツに身を包んだ7人は、まるで映画の秘密工作員のように会場へ潜入し、観客を巻き込むストーリー仕立てのパフォーマンスを展開した。
なお、日本では現地時間の4月3日に開催された授賞式が、4月4日に放送されたため、検索結果やSNSでは両方の日付が使われている。どちらも同じ授賞式を指している。
【007やミッション:インポッシブルを連想】ステージ演出の仕掛けとは?

2022年のBTSのステージを象徴するのが、スパイ映画をモチーフにした演出だ。『007』や『ミッション:インポッシブル』を思わせる映像と動きが組み合わされ、メンバーがそれぞれ異なる方法でステージに侵入していく。
特に注目された5つの演出を紹介する。
1.JUNG KOOKが天井から登場
冒頭で大きな注目を集めたのが、JUNG KOOK(ジョングク)のワイヤーを使った降下シーンだ。天井からステージへ降り立つ姿は、アクション映画の主人公を思わせる登場方法だった。
2.Vとオリヴィア・ロドリゴの共演
客席に座っていたVは、グラミー賞受賞アーティストでもあるオリヴィア・ロドリゴの隣に登場。耳元で何かをささやいた後、彼女の耳の後ろからカードを取り出すというマジックのような演出を披露した。
この場面は授賞式直後から大きな話題となり、海外メディアもSNS上の反応を取り上げた。Recording Academyの公式記事でも、2022年の授賞式を代表する印象的な場面として紹介されている。
3.JINが操作パネルを担当
JINはステージ脇の操作パネルを扱う技術者のような役割で登場。ほかのメンバーがステージへ潜入するのをサポートするという設定だった。
この配置には、後述する左手の負傷という事情も関係していた。単にダンスから外れるのではなく、物語の中で必要な役割を与えられていた点が特徴的だ。
4.レーザーを使ったダンス
ステージの途中では、セキュリティシステムが作動したかのようにレーザー光線が現れる。メンバーは光線を避けながら、複雑なステップや身体の動きを組み合わせたダンスを披露した。
5.ジャケットを使ったダンスブレイク
衣装のジャケットを連結させたり、ギターのように扱ったりする演出も見どころだった。通常のダンスブレイクとは異なり、小道具を振り付けの一部として取り込むことで、スパイ映画のアクションシーンを思わせる視覚的な面白さを生み出していた。
こうした演出について、グラミー賞公式メディアはジェームズ・ボンド風のステージとして紹介。さらに、BTSの公演制作スタッフが取材に応じたWeverse Magazineでは、潜入やセキュリティカードという設定の意図まで解説されている。
【BTSメンバーと関係者一覧】2022年グラミー賞の役割と関係性

今回のパフォーマンスは、7人が同じ振り付けを踊るだけの構成ではなかった。それぞれに異なる役割があり、最終的に全員が一つのミッションを完成させるというストーリーが設定されていた。
以下に、ステージでの役割と関係者を整理する。
特に興味深いのは、JINの役割だ。通常なら振り付けに参加できないメンバーは、ステージ上で目立たない位置に配置されることもある。しかし今回は、操作パネルを扱うというストーリー上の役割を与えられた。
制作スタッフのインタビューによれば、演出の中心には、7人がそれぞれ異なる方法で会場へ潜入するというコンセプトがあった。つまり、JINの配置も単なる代替措置ではなく、作品の世界観と結び付いたものだった。
【JINの負傷と舞台裏】7人でステージを完成させた理由

2022年のステージを振り返る際に欠かせないのが、JINの左手の負傷だ。
JINは2022年3月、左手人さし指の腱の一部を損傷し、伸筋腱を修復する手術を受けていた。所属事務所BIGHIT MUSICは、回復途中で強い動きや衝撃が加わると再手術が必要になる可能性があると説明していた。
そのため、グラミー賞の「Butter」では、JINは冒頭からほかのメンバーと同じように激しい振り付けを行わず、操作パネルの前でサポートする役割を担った。終盤にはメンバーと合流し、パフォーマンスにも参加している。
JIN本人も後日のWeverse Magazineのインタビューで、グラミー賞でのパフォーマンスについて説明している。ほかのメンバーと踊る際に腕がぶつかる可能性があり、再び手術を受ける事態を避けるため、動きを控えていたという。
JINは、負傷した手を強くぶつける可能性のある動きを避けていたと、後日のインタビューで説明している。
さらに、このステージの準備はJINの負傷だけでなく、新型コロナウイルス感染症の影響も受けていた。
Weverse Magazineの舞台裏取材によると、J-HOPEとJUNG KOOKはそれぞれ韓国とアメリカで隔離期間を過ごし、メンバー全員での練習ができたのは本番前日になってからだった。
振り付けを担当したソン・ソンドゥクも、7人がそろってこそBTSの魅力が発揮されるという趣旨のコメントを残している。
この背景を踏まえると、2022年のステージは完成された演出だけでなく、限られた条件の中でグループとしての一体感を取り戻した過程にも価値があった。JINの役割変更も、メンバー全員でステージを完成させるための工夫だった。
【ネットの反応と炎上の真相】BTSのステージに何が起きた?
2022年のグラミー賞で、BTSのパフォーマンスは世界中の音楽ファンから注目を集めた。
特に反応が大きかったのは、次の3つのポイントだ。
- Vとオリヴィア・ロドリゴの場面: 意外な組み合わせとカードマジックの演出が話題になった。
- JUNG KOOKの登場: 天井から降りてくる大胆な演出が、アクション映画のようだと注目された。
- レーザーとダンスブレイク: 衣装や照明を振り付けに取り込んだ構成が評価された。
ロサンゼルス・タイムズは、Vとオリヴィア・ロドリゴのやり取りを取り上げ、ファンがSNSで大きな反応を示したことを報じている。また、グラミー賞公式メディアも、このステージを授賞式の印象的な瞬間の一つとして紹介した。
一方、ネット上で話題になった「炎上」については、パフォーマンスそのものと別の出来事を区別する必要がある。
オーストラリアのテレビ番組「The Project」をめぐる批判
2022年4月、オーストラリアのテレビ番組「The Project」がグラミー賞の振り返り映像を公開した際、BTSのVの映像に咳の音やウイルスのCGを加え、新型コロナウイルスを連想させる編集を行った。
この映像に対し、BTSのファンから批判が相次いだ。特に、新型コロナウイルスとアジア系の人々を結び付けるような表現は、反アジア人差別を助長しかねないとして問題視された。
当時の報道によると、番組のSNS投稿は削除され、ファンからは謝罪を求める声も上がった。
重要なのは、この批判がBTSの「Butter」パフォーマンスに対するものではなく、別番組による編集表現に向けられたものだったという点だ。ステージ自体の演出評価と、放送後の編集問題は分けて理解する必要がある。
また、Vとオリヴィア・ロドリゴの場面についても、恋愛関係を示す証拠ではない。制作側が説明した演出上の目的は、オリヴィアが持つカードを使ってBTSが会場へ潜入するというストーリーだった。
【2026年最新情報】BTSの現在と2022年グラミー賞の意味
2022年のグラミー賞から4年が経過した2026年、BTSは再び7人でのグループ活動を本格化させている。
メンバー全員の兵役を終えた後、BIGHIT MUSICは2026年1月1日、3月20日に新しいアルバムを発売すると発表した。アルバム名は「ARIRANG」。2022年6月のアンソロジーアルバム「Proof」以来、約3年9か月ぶりとなる完全体でのアルバムリリースだった。
2026年3月20日に発売された「ARIRANG」は、BTSにとって5枚目のスタジオアルバム。韓国の伝統的な民謡「アリラン」をタイトルに採用し、グループのルーツや現在の感情を表現する作品として紹介された。
さらに、BIGHIT MUSICの公式ツアー情報には「BTS WORLD TOUR 'ARIRANG'」の日程が掲載されている。2026年10月時点でも世界各地で公演が続いており、完全体での活動が新たな段階に入ったことが分かる。
この2026年の再始動を踏まえると、2022年のグラミー賞ステージは、BTSが世界の音楽市場で存在感を拡大していた時期を象徴するパフォーマンスとして振り返ることができる。
当時のBTSは、英語シングル「Dynamite」「Butter」によってアメリカの音楽市場でも大きな成功を収めていた。一方で、グラミー賞という業界の評価を象徴する舞台では、ノミネートと受賞の間にある壁にも直面していた。
その後、グループは活動形態の変化や兵役期間を経て、2026年に再び7人での活動を始めた。2022年のステージを単なる過去の名場面として扱うのではなく、世界的な成功を追求していた時期の記録として見ると、より深い意味が浮かび上がる。
【プロの結論】2022年のBTSのステージが今も評価される理由
2022年のグラミー賞でBTSが披露した「Butter」は、歌唱力やダンスだけでなく、ストーリー性、舞台構成、映像表現を一体化させたパフォーマンスだった。
特に評価したいのは、メンバーの状況に応じて演出を柔軟に変更しながら、7人のグループとしての完成度を保った点だ。JINの負傷という制約を、操作パネルを担当する役割へと転換した構成は、ライブ制作における演出設計の好例といえる。
また、Vとオリヴィア・ロドリゴの共演、JUNG KOOKのワイヤー降下、レーザーを使った振り付けなど、短い時間の中に複数の見どころを盛り込んだことも、世界的な注目につながった。
一方、グラミー賞を受賞できなかったという結果だけで、このステージの価値を判断するのは適切ではない。受賞は音楽業界の評価の一つであり、パフォーマンスの完成度や観客への影響とは別の評価軸だからだ。
2026年のBTSを知ったうえで2022年の映像を見返すなら、次の3つを判断基準にするとよい。
- 演出と楽曲の世界観が一貫しているか。
- メンバーそれぞれの役割がステージ全体に生かされているか。
- 受賞結果とは別に、観客の記憶に残る独自性があるか。
この3点から見れば、2022年の「Butter」は、BTSのグローバルアーティストとしての表現力を示した重要なステージだった。
【BTSのグラミー賞2022年パフォーマンス】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:BTSは2022年のグラミー賞で何を歌いましたか?
A1:「Butter」を披露しました。スパイ映画をイメージした演出で、JUNG KOOKのワイヤー降下やVとオリヴィア・ロドリゴのカードマジックなどが話題になりました。
Q2:BTSは2022年のグラミー賞を受賞しましたか?
A2:受賞していません。最優秀ポップ・デュオ/グループ・パフォーマンス賞に「Butter」でノミネートされましたが、受賞したのはDoja CatとSZAの「Kiss Me More」でした。
Q3:なぜJINは2022年のグラミー賞で座っていたのですか?
A3:2022年3月に左手人さし指の腱を損傷し、手術を受けていたためです。再負傷を避けるため激しい振り付けを控え、操作パネルを扱う役割を担当しました。終盤にはほかのメンバーと合流しています。
まとめ:BTSの2022年グラミー賞は世界に実力を示した歴史的ステージ
BTSの2022年グラミー賞パフォーマンスは、「Butter」をスパイ映画のような世界観に再構築した、独創性の高いステージだった。
JUNG KOOKの登場、Vとオリヴィア・ロドリゴの共演、JINの負傷を考慮した演出、レーザーを使ったダンスブレイクなど、現在見返しても印象的な場面が多い。
受賞は逃したものの、BTSが世界的な音楽アーティストとして築いてきた実績や、ステージ制作における創造性は揺らがない。2026年にはアルバム「ARIRANG」とワールドツアーによって7人での活動を再始動させており、2022年のグラミー賞はその歩みを理解するうえでも重要な記録となっている。
受賞結果だけでなく、演出の意味やメンバーの舞台裏まで知ってから映像を見返すと、あの数分間に込められたBTSのチームワークと表現力を、さらに深く味わえるはずだ。